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クライマーズ・ハイ 評

小学生の頃の話。個人的な話。

富士山にほど近い山奥の祖父の家によく遊びに行った。

内孫のうち唯一の男児ということもありひどくかわいがられた僕は、定期的に行くことが義務付けられていた。

当時は、素直な良い子だった僕は祖父祖母の「よく遊びにきたねえ」「大きくなったねえ」とう通り一変の感想に、すこぶる孫らしい無邪気な笑顔で応じていた。

夏休みには特別な楽しみがあった。この山奥はカブトムシの宝庫だったからだ。庭にスイカや桃の食べかすを撒いておくだけで朝には群がっていた。

カブトムシがオス、メス合わせて50匹。

クワガタはノコギリクワガタが10匹。コクワガタが10匹。アカアシクワガタが5匹。バカノコが5匹。ヒラタクワガタとミヤマクワガタはレアで各3匹。

10日ほどの滞在でこれほどの戦利品をあげられるのは町内で僕だけだった。学年でも、学校全体でも僕だけだったかもしれない。

帰りの電車では、「ボク、すごいわねえ」と最大限の祝辞をいただいたものだ。100匹近い甲虫類を抱え、虫カゴでは足りずお菓子の箱や缶までもガサガサ言わせていた。

このカブトムシの行方については別の話がある。親父さんから聞いた話だが、僕の性格の一端をとらえているように思う。またどこぞで語るとしよう。

お盆、というと思い出すのはこのカブトムシと、それから日航ジャンボ機墜落事故である。

盛夏の折、富士の山奥の祖父の家に介した親戚一同でテレビを見ていた。本来なら僕は「夏だ一番!ドラえもん祭り」をみたかったはずなのに、ただならぬニュースの雰囲気にすっかり飲まれていた。

いとこの兄ちゃんがカメラの後ろでピースをするガキどもをみて怒りをあらわにしていたのをよく覚えている。

「人がたくさん死んでるのににやけてピースするなんて許せねえ。死んだ人や家族のことを考えろ。」

この事故は僕にとって、人の死というものを理解する成長過程の一段階であったといえる。

新聞社ではたらく面々の熱い仕事ぶりを描く。

仕事にたいする思いが、力強い行動となって映し出される。

芸術性と商品価値、自己主張と世間体。迫る締切にからみつく人間模様。

生涯一記者である悠木の姿が美しい。

悠木は挫折してしまうのだが、しっかりと生きざまを見せつけた。

深遠なテーマがあるわけではない。ひねりのあるプロットというわけでもない。

ただ役者の演技のみを見ていて飽きない佳作であると思う。

【藤岡市民体育館は遺体検視後も死臭を取り除くことができず、解体され別の場所に新しく建て替えられている。跡地は公園や市民ホールとなり、公園の一角には慰霊記念碑が設置されている。】

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