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一月二十六日 暗黒ピータン

 中華街へ行った。新年会と称し、普段よりすこしゴージャスな場所へ行ってみようということで、凍る空気の中、石川町まで足を運んだわけだ。

 僕にとってはひさしぶりの中華街だ。前回来たときは女性二人と僕の三人という夢の花畑のようなシチュエーションだったのだが、今回はうらやましがられることなど一寸もない。まあ、味が変わるわけでもあるまい。甘美な記憶は料理長の誇りをもって払拭してもらおう。

  中華は好きだが難が一点ある。僕は割りに好き嫌いが激しく、中華にはその嫌いな食材がしばしば見受けられるというところだ。

 海老、蟹、貝類、烏賊。このあたりが苦手である。特に海老。あれはよくない。そもそも、海の底でおぞましくの蠢いているチョキしか出せない下等生物をよく口にする気になるよ。よくよく観察してみてほしい。赤く染められた背は無数のイボで埋め尽くされており、尻尾は節で不気味な連なりを形成している。そしてどこまでも冷たい瞳。まるで人類の罪深さを責めいるような目つきである。どちらかというと昆虫の領域ではないか。

 そこで選んだのは注文式の食べ放題の店。お値段2830円。これなら豚ちゃん牛ちゃんを集中攻撃できる。他のメンバーは海老でも蟹でも人類の業でも食えばいい。

 まずはオーソドックスなものから攻める。焼売、餃子、若鶏の唐揚げ、チンジャオロースー、炒飯に焼きそば。うまい。さすがにうまい。このあたりは安定感がある。いいぞ料理長。特に焼売があたり。

 上記をひととおり堪能し終えると、食欲よりも好奇心が目立ち始める。注文する品は徐々にマイナー路線に切り替わっていく。それにともない味は日本人にとって馴染みのない、はっきり言うとあまりおいしくないものになっていった。
 
まずは角煮。これは豚じゃなく牛を材料としたものである。牛の角煮だ。ところが味は馬なのである。コンビーフなのである。
 
次は、冷やし豚スネ肉。あくまで珍味の領域である。以上も以下もなくただひたすら珍味なのだ。所詮、といってもいい。
 
このあとも好奇心系料理がぞくぞくテーブルに並んだ。そしてついにピータンが運ばれてきたのである。

 言葉だけは聞いたことがあったが、目にするのは初めてだった。濁った色合いの、そう、ちょうどドブ川のヘドロのような色の卵を、真っ黒いゼラチン質の物質でコーティングした奇妙な食べ物だ。

 決しておいしそうではい。むしろ不味そうだ。しかし食べてみれば美味いかもしれない。何事もチャレンジだ。何、恐れることはない。ここは横浜中華街。中華料理の聖地じゃないか。聖地で不味いものを出す方がめずらしいだろう。よっしゃ、おいしくいただくぜ。

 撃沈。鼻へ抜ける汚臭が生気を削いでいく。
 わからない。中国の人々の味覚がわからない。
 島国日本。
 世界中で繰り広げられる絶え間ない隣国との紛争が、急に理解できた。人種の差はなかなか埋められないのだろうね。

 デザートのマンゴープリンはあたり。杏仁より格上。

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