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十二月四日 栗ジュース

 高校のとき栗ジュースなるものが売っていた。正式名称は忘れてしまった。500ml紙パックにはいった100円のやつだ。全国販売していたのかは不明だが愛知県西部限定ということはあるまい。

「うお何これすげえ」

登校途中に立ち寄ったサンエブリーで、友人が興奮気味に話しかけてきた。授業中のものとはまるで異なる悪戯小僧の目の輝きは、何よりも説得力をもって僕に訴えかけた。

「買ってみようぜ」

「お主も好きよのう」

無言で交わした。

 学校に着くや互いに頷きあってふたを開けた。友人がためらうことなくストローですすった。陸上部キャプテンだけあって潔い。スタートダッシュが違う。

「オォエ!」

栗ジュースを僕に託し、その場に崩れ去った。潔さが仇となった。

 注ぎ口から中をのぞくと茶色い液体がゆれているのがみえる。悠然とした中にもとてつもない攻撃性があるようにみえる。透明度はゼロだ。ちょうどコーヒー牛乳みたいな色合いである。しかし雰囲気はそんななまやさしいものではない。圧倒的だ。

 右手に持った栗ジュースと、撃沈した友人を交互に見た。晩秋にもかかわらず汗がにじんだ。裏切ることはできない。友よ、一緒に死のう。白虎隊みたいな気分である。

 教室に16歳の勇者が二人散った。

 栗ジュースはその後、昼休みの罰ゲームにまつりあげられた。みんなで古今東西をやり、負けた者が飲む。ふさわしい使用方法である。隣のクラスからも、そのまた隣のクラスからも挑戦者はやってきた。猛者たちは次々に血祭りにあげられていった。

次回 栗三部作その2 くりホテル

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