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おおきな木

おおきな木

シエル・シルヴァスタイン(ほんだ きんいちろう やく)/ 篠崎書林

 本をまったく読まない幼少時代でした。文字を読むという行為が面倒で仕方なく、面倒であるがゆえ感情移入できず、よって決定的につまらない。話は仮面ライダーやウルトラマンなんかにくらべると地味で、少年には退屈な代物。変身ベルトを腰に巻いてポーズをキメる方がお気に召したのでしょう。

 それでも家にはいくつかの絵本があって、雨の日などにたいした興味もなくページをめくっていました。

 妙に引き付けられた、記憶に残っているものがあります。『おおきな木』はその一つです。唯一といってもいい。子供の頃から割りと多く引越しをしていたせいでその度に荷物が減らされるなかこの絵本は残り続けました。

 子供は自分が子供であることを認識している。その上で駄々こねたり泣いたりする。子供の特権が結局は何もかも解決することを悟っており、同時に知ってはいけないことがあることも理解している。人間の暗い側面を知るにはまだ早いと懸念しつつ、年齢を重ねるごとに大人の領域を拡げていく感がある。僕はこの絵本を読んで「子供にこんな話を読ませていいのか。大丈夫かよ文部省」と思っていました。しかしページをめくらずにはいられなかった。この絵本には目を背けてはならないと思わせる吸引力があるんです。

 悲しい話です。メインの二人(?)の関係があまりに一方的過ぎる。対等じゃない関係というのはどこかいびつで、そのいびつさを埋めるだけの要素が感動の軸になっていくのだけれども、読書嫌いの子供にそうした描写を読み取る力などあるはずもなく、煮えきらない不可思議な感情がずっとはびこったままでした。

 いびつさを埋める要素が親子愛だということに気づいたのはずっと後、大学に入ってからです。

 身を削る木、まさに人生そのものを分け与える痛みが、視覚から分かるようになっているんですね。子供に大切なお金を、時間の対価を、人生の一部を惜しみなく供する親の情を感じさせます。

 寄り添う木とぼうや、ん?浮気に悩まされる貞淑な妻と夫にもみえてきた。

 いずれにせよ、無償の愛ってやつが主題でしょう。あ、僕は嫌いですよ、無償の愛。不毛だもん。受けるほうは感謝を忘れてはならないけど。

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★友人の子にプレゼントしました。イルカ嫌いの男の子。読めるようになるのはまだ先のこと。

「書物をプレゼントするなんてお主なかなか気障よのう」

否定はしないが。

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